エクアドル研修員OBからの手紙

 

2010年6月アンバトにて  2010年6月アンバトにて

拝啓

 皆さん、お元気でいらっしゃることと思います。こちらでは5月28日金曜日の午前8時47分にトゥングラワ火山が突発的な噴火プロセスを開始しました。火山灰が柱状になって放出し、火砕流が発生して火山の南西側に流れ下ったため、火山周辺に位置するいくつかの集落が避難しました。しかし住民が臨機応変に対処し、早期警戒システムが十分に機能したおかげで、避難した地域の住民はみな無傷で、人命に害は及びませんでした。この噴火発生当日から今日に至るまで、私たちは家畜の避難や被災者への食料および宿泊先の供給など緊急事態への対応に専念し、地球物理学研究所(エクアドルの火山モニタリング担当責任組織)は、生じうる四つの局面を次のように提示しました。

 

1.大規模の火砕流が発生し、火山周辺地域に被害を与える。この局面では、火山の北西から北側に位置する観光都市バニョス・デ・アグア・サンタまで流れる2本の河川流域の住民に最も配慮すべきである。

 

2.火山灰が多量に放出して風に運ばれ、火山の南から南西側の地域に被害を与え、エクアドル国内の複数県で広範に渡る農地および畜産用地に害を及ぼす。

 

3.溶岩湖ができ、その溶岩が火山側面に流出し、この溶岩流の通過地点にある施設や集落に被害を与える。トゥングラワ火山の溶岩は粘性がかなり高く、溶岩流が発生しても流出速度が非常に遅いと推測されるので、この局面はさほど困難なものではないが、発生すれば当該地域にある耕作地や観光インフラに被害を与えうる。

 

4.火山は沈静化し、噴火活動が終了する。

 

 この2週間、「母なるトゥングラワ」(地元住民の間では、火山はこの名で知られています)は様々な噴火様式を見せ、その性格をあらわにしました。40キロも離れた場所からでも聞こえる爆発になったり、火山周辺で地震を発生するものの火山灰や火砕物は放出しなかったり、高さ10キロにも達する柱状の噴煙をまきあげ火山灰をエクアドル沿岸地域、太平洋に面したグアヤキル(火山から300キロ以上離れている)などの町まで飛ばしたりもしました。そして現在の状態に至り、音もなく火山灰を放出し続け、火山に最も近い地域、特に火山南西側の地域に害を及ぼしています。

 

 このように約3週間、多忙な業務を行ってきました。
 マルセロ・カンパーナは、当局が決定を行う際の判断材料となる、日々発生する情報を管理する県情勢室の業務を担当しました。 ファブリツィオ・リオフリオは、緊急時対応援助のため国家局から県に派遣され、現場での指示を行い、避難活動や指示援助を企画調整しました。 パブロ・パラシオスは、地球物理研究所にて、火山活動の局面を明らかにし、その様相を理解するために必要不可欠な、科学的裏づけとなる情報の提供を行いました。 マルコ・モンテスデオカは、トゥングラワ県危機管理調整室にて、県当局と共に緊急時対応活動を企画調整する責任者として従事しました。

 

 この過程で最も貴重だったのは、私たちが日本の研修で身につけた知識と経験が、県のCOE(緊急対策委員会)をより良い方法で構成するのに役立ったことです。委員会を構成するメンバーの多くが何年にも渡って噴火プロセスに従事してきた者でしたが、その専門的知見は研修で得られた情報によってさらに豊かになりました。

 

 先週には火山は第二局面に入ったので、軍および公的機関が住民の安全のための救援活動を行いつつ、また噴火様式の突発的変化が予測され、熱雲も発生したので避難所を準備し稼動した状態に維持しながらも、居住地域から避難していた住民の帰宅が可能になりました。これはある意味、緊急対策担当者にとって束の間の休息になりましたが、被災地域の住民や家畜類の健康や食糧供給への対応、トゥングラワ県やその他の県で絶え間なく続く火山灰降灰による住居被害の可能性に向けての対応は引き続き行われています。

 

 これからもトゥングラワ火山および私たちの業務についての最新情報をお伝えしながら、皆さんと連絡を取り合いたいと思います。日本で火山防災管理研修に参加した私たち4名が、今こうして実際の火山緊急事態に共に働いているのは非常に興味深いことです。この手紙がこれからの研修生にも紹介され、JICAを通じて私たちの知識と能力をさらに深める機会を与えてくださった日本の皆さんへの感謝の証としてお役に立てることを願っています。

敬具

 

 

 

 

 

 

 

マルコ、マルセロ、ファブリツィオ、パブロ

マルコ、マルセロ、ファブリツィオ、パブロ

 
 

 

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